いやよいやよと、私が泣く。
こわいこわいと、私が泣く。
ママー!

「何を泣いてるの?小さなリリン」

ギョロ目の鳥が現われた。
いつものように羽根を広げ、いつものように私を抱いた。
とりさんとりさん。こんにちは。あのね、ママがね、かえってこないの。

「ああまたその事か、まだ泣いてるの。ママはもう帰らないって言わなかった?」

ギョロ目の鳥が片手を上げた。
五本の指で両目を覆い、私の光と視界を消した。
とりさんとりさん。こんにちは。あのね、ママがね、かえってこないの。

「可哀相にね、幼いリリン。まだママが恋しいの?だから毎日泣いてるの?」

ギョロ目の鳥が私に触れた。
私の耳に髪を寄せた。
とりさんとりさん。こんにちは。あのね、ママがね、かえってこないの。

「悲しいことだね、儚いリリン。君は本当にママが必要?ママの顔は怖いんだろう?」

ギョロ目の鳥が耳元で言った。
ママはいつでも君に見せるよ。怖いものばかり君に見せるよ。
とりさんとりさん。こんにちは。あのね、ママがね、

「もう一度言うよ。君は本当にママが必要?君にとって何が必要?君が必要としたモノは、君に何をくれたんだい?」

怖いものばかりくれただろう、と。
ギョロ目の鳥が私を舐めた。白いクチバシから生える蛇。蛇は私に巻き付いて、私の中に入って来た。
びくり。びくびく。びくびくうごく。

かえってこないよぅわたしのママ。
お空でゆれてて、かえってこないの。
痛いの怖いの熱いの寒いの苦しいの。びくりびくびくびくるびくるしいびくび苦しいび苦るしい苦しい狂シい狂シイクル死イくるしいとりさん鳥さん苦とりさんと苦りさん死とりさんとりとり狂とり鳥とり死とり狂とり鳥とり狂シイ来る死イ狂る死い苦しいよぅ

それが、君の、運命。なのだと。
ギョロ目のとりがわたしにいった。
私の、望んだ、もとめた、ものは、こんなに、こんなに、怖くて、嫌な。
死ぬのは嫌。
でもこわいのは、もっと。

「だったらおやすみセカンドチルドレン。この先君の運命はどうせ辛い事ばかりだよ。だから寝ていた方がいいんだよ。怖いのも苦しいのも嫌なのだから、このまま目覚めない方が幸せなんだよ。ねぇ、だって、」

僕が生き延びる事が僕の運命なのだから。だからどうせ君達は……と。

ギョロめのとりが、おやすみといった。
そうね鳥さん。そうするわ。
ごめんねシンジ。見たくないの。
痛いのも辛いのもあついのもさむいのも
苦苦来来狂狂死死死死死イノモ

ぜんぶ嫌。