今日のママは、ごきげんなの。
ずっとブランコであそんでるの。
ながいスカートがひらひらゆれて、ママはとってもたのしそう。
ギーコギーコ、って揺れてるの。
ママー。
ねえママー。
わたしものせて?
ママといっしょにブランコのせて?
『ブランコじゃないよ』
ギョロ目の鳥が私に言った。体の真ん中に赤目が一つ。白い翼と二本の足。
とりさんとりさんこんにちは。
どうしておめめも羽根もひとつなの?
『ブランコじゃないよ。よく見てごらん。ママはどこにも座ってないだろう?』
だけどママは揺れてるわ。お空に浮いてゆらゆらしてる。
『そこからじゃよく見えないの?抱えてあげよう。来てごらん』
いやよなんだかこわいもの。そこは暗くてこわいもの。
『どうして怖いの?ママの傍だよ?暗闇が怖いなら灯りを点けてあげようか?』
いやよ、いやいや。あかりは、いや。ママのお顔がみえるもの。
『どうして嫌なの?ママの顔だろ?ママをはっきり見たくはないの?』
とりさんとりさん。いじわるね。
あかりはいやなの。くらいのもいや。
ママ ママ
はやくおりてきて。
はやくとりさん追い払って。
『本当にいいの?降りて来るよ?明るくても暗くても顔が見えるよ?君が望めば降りて来る。ほうら少し足が下がった。ほらまた少し、足が揺れた。よく見てごらん?あれはブランコ?』
いやいやいやよ。おりてこないで。
そんな厭なの見せないでよぅ。
『じゃあほら行こう。ママの居ない処へ。振り向かずお行き。手を引いてあげる』
ギョロ目の鳥は片手を出した。羽根の生えていない人間の手。
とりさんとりさん。ありがとう。おうちに還るまではなさないでね。
あすかのお手々をはなさないでね。
『離さないさ、哀れなリリン。空からママが睨んでるからね。君を返せって煩いからね。さぁほらお行き。ママが来るよ。家に帰って鍵かけて、誰も入れないようにしておいで』
とりさんとりさん。さようなら。
ねえ、ママはいつかえってくるのかなぁ。
「……帰らないって言ってんだろ。しつこいな」
煩いわねこの変態。
バカシンジ、あんた一体何やってんのよ!?