好き、好き、好き、 嫌い。
好き、好き、好き、 嫌い。

「何やってんの?」

上を見上げたらフィフスがいた。くりんと大きな真っ赤な瞳。キラキラの銀髪を風に揺すり、かつて敵だったこの男は興味深気に私を見下ろし、笑っている。

「何って、花占いよ。あんたもこのくらい知ってるでしょ」

花壇の煉瓦の縁に座っていた私は、手に持った狂い咲きのコスモスをふるふると振った。
揺れる薄いピンクの花びらは私にむしられあと半分。……私と加持さんの運命も、あと少し。

「花占い?」
「そうよ、知ってるでしょ?」
「知ってるけど」

でもセカンド、と、両手をポケットに突っ込んだままフィフスは私の前にしゃがみ込む。

「花占いってのはさ、好きと嫌いで交互に占うもんじゃないの?今の君を見てると好き好きばっかり、」
「うるさいわね!いいのよこれで!」

私はコスモスを銀髪の顔に投げ付けた。

好き好き好き、嫌い
好き好き好き、嫌い
加持さんとミサトの結婚が決まった。結婚式はしないんだと、二人幸せそうな顔で笑っていた。
大人は汚い。大人はずるいわ。今まで何の素振りも見せなかったくせに、赤ちゃんが出来ただなんて、馬鹿じゃないの!?

「……っぅ」
「セカンド」
「……っく」
「セカンド」

うるさいわね。もうどっかに行っちゃってよ。
人でもない生き物に髪をふさふさ撫でられて、私はとても情けなくなる。

「シンジ君にさ、君を探して来いって言われたんだよね」

……あんたそういうのばっかりね。

「でも僕は、君はもう少しここに居ていいと思うよ」

……あんたもシンジに逆らうことあるんだ。

「よいしょっと」

おじさん臭い掛け声でフィフスは一度立ち上がり、私の横の花壇に座った。私は下を向いて膝に額をくっつけて、自分の涙がスカートの太ももにポトポト落ちるのを見ていた。

「えーと好き、嫌い、好き、嫌い、好き、」

花占いをする使徒。

「嫌い、好き、嫌い、好き、」

きらい。

「あは、 “好き” だったよ」

もう一度髪を撫でられて、滲む視界を目蓋で覆った。

「嘘ばっかり」

私は大声で泣いた。

END.