紙飛行機

…1/1

僕達に翼はないけれど。

* * *

「下っ手くそだなぁ」
「ふはは!」

白い紙を強引に折り付けて作った紙飛行機。教えた僕が情けなくなる程不恰好なそれを、渚は空に向けてはしゃいでいる。

「ねぇねぇ飛ぶかな?これ」
「飛ばないんじゃない?」

先端折れてるし。それでも渚は公園のベンチから立ち上がってそれを投げた。

「そりゃ!」
「お」

青空を切るように空に放つ。白い紙飛行機はひょろひょろとおかしな軌道を描いて宙を舞った。

「あは!飛んだー!」
「はは、なんだあれ」

ひょろひょろ左右に飛んで落ちる紙飛行機。芝生の上でひっくり返るそれは、あまり格好良いとは言えないけれど。

「あー僕紙飛行機作りの天才かもしんないよ」
「何だよそれ」
「今の曲芸飛行の芸術的なこと!」
「はは、言ってろ」
「次シンジ君の番ね」
「はいはい」
「僕より飛ばなかったらジュース一本」
「はいはい!」

僕はノートをもう一枚ペリリと破った。

僕達は互いに翼を折り合って飛ぶ紙飛行機。ひょろひょろ飛んだり、真っすぐ飛んだり。
たとえ飛ばずにひっくり返っても、それはそれで、

「それっ!」
「わ!」

割と面白いんじゃないかと、思うんだ。


【紙飛行機・ただの紙なら飛べなかった】

END.

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