僕達に翼はないけれど。
* * *
「下っ手くそだなぁ」
「ふはは!」
白い紙を強引に折り付けて作った紙飛行機。教えた僕が情けなくなる程不恰好なそれを、渚は空に向けてはしゃいでいる。
「ねぇねぇ飛ぶかな?これ」
「飛ばないんじゃない?」
先端折れてるし。それでも渚は公園のベンチから立ち上がってそれを投げた。
「そりゃ!」
「お」
青空を切るように空に放つ。白い紙飛行機はひょろひょろとおかしな軌道を描いて宙を舞った。
「あは!飛んだー!」
「はは、なんだあれ」
ひょろひょろ左右に飛んで落ちる紙飛行機。芝生の上でひっくり返るそれは、あまり格好良いとは言えないけれど。
「あー僕紙飛行機作りの天才かもしんないよ」
「何だよそれ」
「今の曲芸飛行の芸術的なこと!」
「はは、言ってろ」
「次シンジ君の番ね」
「はいはい」
「僕より飛ばなかったらジュース一本」
「はいはい!」
僕はノートをもう一枚ペリリと破った。
僕達は互いに翼を折り合って飛ぶ紙飛行機。ひょろひょろ飛んだり、真っすぐ飛んだり。
たとえ飛ばずにひっくり返っても、それはそれで、
「それっ!」
「わ!」
割と面白いんじゃないかと、思うんだ。
【紙飛行機・ただの紙なら飛べなかった】
END.